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2014年8月23日 (土)

提言  地方再生への「三本の矢」-地方財源改革、創業環境改革、ライフスタイル改革

 

 

 

提言

  

地方再生への「三本の矢」

 

~地方財源改革、創業環境改革、ライフスタイル改革~

 

 

 

 

NPO日本シンクタンク・アカデミー

理事 玉田 樹

(㈱ふるさと回帰総合政策研究所 代表取締役)


 

要旨

1.問題の本質と地方再生の視点

地方の再生が、およそ20年ぶりに国を挙げての課題となった。ことの本質は、毎年地方人口の0.20.3%が大都市に流れていく状態が続いており、このほとんどは、大学進学によるものであることである。地方の17歳人口の27%が自県以外の大学に進学し、卒業後もそのまま大都市に残留するのは20%に達することが続いている。

この地方の若者が、わが国牽引の役割を担っていることはいうまでもない。しかし問題は、地方の経済を牽引し子を生み育てる再生産パワーが、常に5分の4に割り引かれ続けている現実がある。20年たてば地方は確実に0.8掛けの状態になる。

とくに直近の20年は、これへの対応がほとんどなされてこなかったと言っていい。いま、人口の流出を止めるダム機能として地方の拠点都市整備の構想が上がり始めているが、これが有効に機能するか定かでない。1975年に地方に6つあった人口50万人以上の都市は、いまでは14にも増えている。にもかかわらず、若者人口の漏えいはダムをすり抜けて今日まで続いている。

ここは一丁、防衛ではなく反転攻勢をかける時である。地方が抱える問題の本質である2割の若者の逸失を、真正面から受け止め、それをカバーする政策が必要である。そのため、地方の出生率をより向上させ、子どもを生む再生産年齢人口をまともに増やし、結果として2割の減少をカバーする出生数をもたらす政策が必要となる。

 

2.地方再生への3つの提案

 地方の出生数の増加を図るために、「地方財源改革」、「創業環境改革」、「ライフスタイル改革」の3つを提言する。

 

提言1.地方財源改革 ; 復元力のバネとして地方交付税の再設計

~出生数向上の競争社会づくり

 地方は、地方税が2割もディスカウントされ続けることを自らカバーする術をもっていない。地方交付税の基準財政需要額は、人口の減った「現在を評価」し地方の縮小を是認している。これでは地方は成り立たない。

 そこで、地方交付税 に“財源復元機能”をもたせる改革を行い、出生数を向上させることを提案する。具体的には2つある。

ひとつは、地方交付税に「出生率を評価」する機能をもたせることである。地方の合計特殊出生率(以下、出生率)の平均は1.47で、地方の現在51万人の出生数を2割上げるとすると、平均出生率を1.76まで上げる必要がある。

これを可能にするひとつの方策は、地方交付税に「出生率の評価」基準を持ち込み地方にチャレンジする機会を与えることである。これを行えば、より多くの地方交付税の交付を受けるために、政府による出生率向上策を乗り越えて、地方が独自にそれぞれ出生率の向上のために子育て助成や学費無償化などの工夫をし、出生率をめぐる競争環境が生まれることが期待される。

 いまひとつは、地方交付税に「逸失した子ども数の評価」を評価基準として持ち込むことである。誤解を恐れずに言えば、子どもたちが大学進学で大都市に出て行くことはやむを得ない。必要なことは、これによって減額された地方税と地方交付税をこの評価によって補てんし、この財源を使って地方が裁量をもって逸失した子ども数を回復する試みができるようにすることである。

 とくに、地方の再生産年齢人口の人口に占める比率は、1990年には12.9%、2000年には12.6%あったものが、2012年では11.0%と特にこの10年あまりで激減してしまった。長男・長女社会のもとで女子の4年制大学の進学率が1990年頃から急速に高まったため、地方の再生産力はボロボロになってしまったのだろう。もはや、地方は出生率の向上のみでは、成り立たたない。

 したがって、地方の再生産年齢人口を増やすことが、いまや急務である。「逸失した子ども数の評価」がなされれば、より多くの子どもを逸失した地方はより多くの財源を得て、それを域内女性の流出防止、さらには域外からの“呼び込み”の施策に活用して復元を図ることだろう。

 

提言2.創業環境改革 ; 再生産人口を呼び込むための起業誘致条例の設計

~地方での女性の起業家づくり

 政府は開業率10%を目標として、さまざまな起業支援策を実施している。しかし、地方にとって十分とはいいがたい側面が多い。

そこで、地方の再生産年齢人口の流出防止、さらには“呼び込み”に向けて、創業環境の改革を行うことを提案する。具体的には、地方それぞれが独自の裁量で行える恒常的な「起業誘致条例」を制度化すべきである。

リーマンショック1年後の2009年に、提案者が主宰する研究所が全国10万人にアンケートを行ったところ、男女年齢を問わず30%もの人が「田舎に行って働きたい」と答えた。“都会での雇用よりも田舎での生業づくり”の自立志向が増えている。この動きを具体的に支援して分かったことは、とくに6次産業分野では地方において起業者の4割近くが女性であり、起業に対する熱意と迫力は男性陣を圧倒するものがあるということである。

このような地方における6次産業を中心とした起業に対する盛り上がりを捉え、地方はそれぞれ「起業誘致条例」の制定を進め、恒常的支援策を用意すべきである。そのため、政府は企業誘致条例に対する企業立地促進法と同様な支援を行うべきである。また、地方の特産品の販売支援において、起業者の商品も対象に加えてテストマーケティングを行い商品開発の支援をすべきである。さらに付け加えるなら、起業者には数年間課税補足外の扱いをして、アンダーグランド経済が地域経済の活性化を生む下地をつくる覚悟で臨んでほしい。

また、規制強化や規制緩和を行って、起業の参入障壁を下げることも必要だ。農業組織の維持は地方で農産品流通業の起業を生まれにくくしている。同様に宅建業の仲介料率の一律規定は地方の空き家の市場化に不動産業が参加しにくくしている面がある。このような独禁法適用除外が地方での起業にとって大きな参入障壁となっており、その解除を急ぐべきである。一方、マイクロな起業にとってさまざまな設備に関する標準的な規制は事業推進にとって重荷になる。これの見直しも進めてほしい。

 これによって多くの起業家が生まれ、その4割は女性が占め、女性の雇用も生まれる。女性の活用は、何も管理職に限らない。社長でもいいのである。

 

提案3.ライフスタイル改革 ; 「兼業」と「二地域居住」のライフスタイル改革

~地方移住の新たな仕組みづくり

 しかし、落下傘のようにいきなり地域に移住し、すぐに起業することは至難の業のようである。起業するには地元の協力を必要とするからで、このためには移住して数年はかかるとみられる。この起業の“発起”と実際の“起業”との間のアイドルタイムを埋めるものとして、大都市に住みながら、時間がある時に田舎住まいをする「二地域居住」というライフスタイル改革を行うことを提案する。

 今般、経済産業省は、会社員が職に就いたまま起業を準備できるよう「兼業・副業」のガイドラインを年内にも作る。この仕組みと連動して二地域居住を推進し、田舎での起業の準備を後押しするのである。

10万人アンケートでは、今後、移住・定住したい人が6%、二地域居住したい人が13%存在することがわかっている。こうした人々の潜在意欲に火をつけ兼業という機会を捉えて二地域居住を推進し、結果として田舎での起業家を陸続と生むことを通して、地方が失い続けてきた2割にも上る再生力を復活させるのである。

 そのため、これまでのような“悠々自適”な田舎暮らしでなく、“田舎で働く”風景をもった二地域居住のライフスタイルの風土づくりを政府が率先して進めるべきである。企業や大学への働きかけも必要だ。さらに実践者や地域にインセンティブを与えるため、「第2住民票」の導入を検討すべきだ。実践者の交通費割引や家賃補助の証明に使うとともに、将来、これによって住民税が案分されることを期待する。

 二地域居住を受入れるための、空き家の市場化は急務である。地方の健全な1戸建て空き家は120万戸あるが、市場に出てくるのは数%にすぎない。不動産業界などと協力しながら、空き家管理の仕組み、安心して賃貸に出せる空き家を増やすための中間管理機構などの整備を早急に実施すべきである。

 

3.地方再生「三本の矢」の実現に向けて

二地域居住者がいずれ定住者になることが期待される。だが、問題は、子どもが成長して上の学校に行き始める頃になると、親は学資を稼ぐために都会に戻ってしまうケースが多い現実がある。

そのため、提案1「復元力のバネとして地方交付税の再設計」によって、地方が独自に学費の無償化など子育ての政策が打てる体制をもつことが必要である。また、農業だけでは稼げないため、提案2「再生産人口を呼び込むための起業誘致条例の設計」によって、より付加価値の高い6次産業の起業に定住者を誘導することが必要となる。

だから、3つの提案は三位一体であって、「地方再生・三本の矢」となってはじめて地方再生に力強いパワーが生まれる。

 

 安倍首相がメキシコのテオティワカン遺跡で願ったように、地方再生は、本提案にかぎらず、総力戦で臨まなければならない。平時ではなく非常時の鉄則、「出来ない理由探しをするな、どうすれば出来るかを考えよ」「逐次投入はやめよ」という姿勢で臨んでほしいと思う次第である。

 - 提言の全文は下記URLよりご覧下さい。

http://www.npo-jtta.jp/information/information1409.pdf

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